知れば知るほど面白いコードバン その魅力、特徴的な繊維にあり

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気品ある手のかかる素材

革製品が好きな人であれば、誰もが一度は憧れるコードバン。

馬のお尻からわずかに採取できる貴重な素材だ。

手入れの行き届いたコードバンの艶は、他の革と一線を画している。

水濡れたような艶やかさを持ちながら、耐久性も備えている。

一方で、水に濡れるとブクと呼ばれる水膨れができてしまったり、ケアの時にはレザースティックなどで押し込むといった作業がある。

手はかかるけど、高級で耐久性もあって艶ややかな表情を持つ魅力あふれる革だ。

そんな表面的なところだけを語るのは、もったいないほど本当に面白い素材なのだ。

結論から言えば、面白さはその繊維にあった。

革の宝石と言われるはなぜか?

よくコードバンは「革の宝石」と呼ばれる。

深く考えてはいなかったが、非常に貴重な素材であり、上品なツヤを持つことからそうした呼び名が付いていたと思っていた。

しかし、どうもそうではないらしい。

コードバンの取り出し方が宝石と似ているという由来があるようだ。

革には動物の時に皮膚の表面か内側によって、銀面、床面と呼ばれる革の表裏の呼び名がある。

ざっくりと分けるなら、より表皮に近い方を銀面、体内部に近い面を床面となる。

▶︎革の特性とは?

スエードなどは床面を表側として使っている代表的な革だ。

そして、実はコードバンも床面を表として使っている革となる。

ただ床面を用いるのではなく、製造の過程でコードバン層と呼ばれる繊維帯を取り出すために削り出していく。

この工程が宝石の発掘に似ているからということで革の宝石と呼ばれているそうだ。

大きな馬のお尻部分というわずかな面積しか採取できず、その筋肉層を地道に掘り出してようやく到達できる革。

と考えるといかに貴重なものなのか痛感する。

特徴的な繊維

コードバンの上品な艶や水分に弱いこと、ならびにケアの時に押し込むという工程が必要な理由はその特徴的な繊維から全て説明が付く。

私がコードバンという素材が面白いと思ったのは、まさにこの繊維の特性だった。

繊維の特徴

コードバンの繊維の特徴は、水平方向である牛革と異なり、表面から見て垂直方向になっている。

簡易的に模式化すると下記のようになる。

そして、その密度も表革の約3倍とも言われているようだ。

革は表面の凹凸が少ないほど艶は増すが、いくら密度が高いと言っても針山のような状態ではさすがに毛羽立ったような表面をイメージしてしまう。

それこそスエードのような表面じゃないかと思ったが、コードバンになるにはもう一手間加えられている。

それはこの特徴的な繊維を一方向に隙間なく寝かしつけているのだ。

こうして鏡のような美しい表面となる。

※模式化した画像が鏡に写せないくらいの酷さは触れないでください。

水に弱い理由

ここまででコードバンの緻密で垂直に向いた繊維を寝かせることで、美しい艶を放った表面になることを解説した。

では、なぜコードバンは水に弱いのか?

冒頭でも述べたように、コードバンは水に濡れることで水膨れ状の段差の跡ができてしまう。

このメカニズムは、水に濡れることで無理やり寝かしつけていた繊維が、元に戻ろうと起き上がってしまっているのだ。

つまり、コードバンは水に弱いのではなく、濡れることで繊維が本来の姿に戻ることで外観的な美しさが損なわれてしまう。

水との相性が悪いと言われているのはこれが原因だろう。

そして、この逆立った繊維を繊維の修復には再び寝かしつけなければならない。

それが、ケアの時にレザースティック等で押し込むという工程が必要な理由だ。

以上のように、コードバンの繊維には特異的な特徴があり、これが魅力的な一面と面倒な一面を生み出している。

コードバンの分類

コードバンって何に使われているのか思い浮かべると、革小物や革靴、高級ランドセルなどがまず浮かぶ。

ただ、ここまでの話を考えると雨にも濡れるランドセルってどうなの?って思う方もいるだろう。

ご存知の方も多いと思うが、一口にコードバンと言ってもいくつかの種類がある。

分類方法の一つに染料仕上げ、顔料仕上げという仕上げ方の分け方がある。

それぞれの特徴は下記のようになっている。

  • 染料仕上げ:液化した化学染料を染み込ませる(塗膜なし)
  • 顔料仕上げ:顔料、樹脂、溶剤を塗布(塗膜あり)

これらの違いは革本来の表情もしくは耐久性のどちらかを選択している。

両者はトレードオフの関係にあって片方を選べば、もう片方は得られにくい。

染料仕上げは、アニリンコードバンやオイルコードバンなど革本来の表情を楽しめる仕上げ。

しかし、塗膜がなく傷がつきやすく耐水性もないので、水に濡れると白い水膨れができやすい。

主に高級靴や革小物などで使われているのを目にする。

一方で、顔料仕上げは耐久性に特化した仕上げ方法。

水や摩耗に強く、コードバン自体の耐久性も相まって形崩れもしにくい。

まさにランドセルにはもってこいの素材だろう。

しかし、こちらは表面に表面に人工的に膜を張っている状態になるので、経年変化等の革を楽しむという目的では染料仕上げには劣るかもしれない。

まとめ

今回は漠然的に憧れていたコードバンという素材についての紹介。

コードバンは水に弱い、艶が独特、手入れに手間がかかるという表面的なことしか知らなかったが、

その繊維の特徴を学ぶことでこんなにも面白い素材なのかと痛感した。

特にその繊維は驚くことばかりだった。

ここにまとめておく。

  • コードバンの繊維
  • 表面から見て垂直に向かっている
  • 表面の3倍の密度
  • 繊維を寝かしつけた艶のある面

これらを知っておくだけで、コードバンについてより一層関心を得ることができた。

コードバン用のケア用品ってなぜ分けてあるのかも疑問だったが、おそらく乳化性クリームよりも水分量を落とした配合など色々と工夫がされているのだろう。

上品な艶を持ちながら耐久性も備えている。けれども精細な一面もあるコードバン。

革製品の愛好家の心を掴んで離さないだけの魅力はある。

今回はあくまでコードバンの素材の特性について語ったが、経年変化もどのように変化するのかも非常に気になるところだ。

使い込まれてさらに美しい姿になったコードバンの製品も見てみたいものだ。

この本には紳士靴に関する知識が詰まっています。

今回紹介したコードバンに関する記載もございます。

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この記事を書いた人

1992年11月生まれ。
190cmの大男の細かい趣味のブログ。
2020年より「こだラボ」を執筆し、2021年2月に「Lab.」に名称変更。
趣味は靴磨き・旅行・読書・ゲーム・ボクシング観戦。

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