言わずと知れた名作
靴磨きに少しでも興味がでてくれば自然とこのクリームに辿り着くでしょう。
それが SAPHIR NOIR の Creme 1925(通称:クレム)。
このクリームを初めて知ったときは「なぜこのクリームだけクレムっていうフランス語で呼ばれてるんだろう」って思ってました。
もちろんフランスのブランドだからといえばそれまでなんですが、シューケア用品において「クレム」というのは総称である「クリーム」ではなく、SAPHIR NOIR の Creme 1925を示す固有名詞だと思う。
というのも、SNSで革靴を磨いた写真とコメントを見ると
〇〇のクリームは最高に使いやすい!
〇〇:ブランド名
というのをよく見る(私だけであったらここは飛ばして欲しい)。
靴磨きの投稿ではシューケア用品の紹介にはブランド名+総称で呼ばれることが多い中で、このクレムは一際異彩を放っているように感じたのを今でもよく覚えている。
〇〇のデリケートクリームとクレムでケアしました〜
※記憶を元に再現
数少ない固有名詞で呼ばれるこのクリームにそんな魅力があるのか疑問を持っていた。
当時の私はその口コミの良さからとりあえず黒のクレムを購入してみた。
それから早いもので2年ほど経過しただろうか。
今では6色のクレムを持っていて、その使用感や仕上がりの虜となっている。
今回はそんなクレムの魅力を紹介していきます。
どんなクリーム?
シューケア用品の世界的権威であるAvel(アベル)社から生まれた SAPHIR(サフィール)
このハイグレードラインのSAPHIR NOIRから出されているシューケアクリームがクレムになります。
大まかな概要はこんな感じ。
種類 | 油性クリーム(水分なし) |
カラー | 16種 |
価格 | 2,420 円 |
内容量 | 75ml |
カラバリが豊富
まずありがたいのが16種類のカラーバリエーション。
同じ油性クリームではBootBlackのアーティストパレットもあるが、こちらは20種と色の揃え自体では劣るがクレムも茶色一つとってもかなり多くのラインナップが揃えられており、ほとんどの靴に対応できるだろう。
光沢・栄養を革へ与える
シアバター、ビーズワックス(みつろう)、カルナバワックスといった6種類の天然ワックスを配合しており革へ重厚感ある光沢と保革効果を付与する。
正直なところ栄養面に関しては、いち靴磨き初心者の私がこのクリームを使って他のクリームより栄養を多く与えることができたという判断はできない。
しかし、天然の高品質ワックスを配合していることからも素材へのこだわりというのは感じる。
一方で、光沢感は他のクリームとは明らかに異なる。
これはクレム使用者であれば、実感いただける点だはないだろうか?
ワックスに配合されている成分を多く含有している油性クリームならではの光沢を感じる。
もしも、鏡面を作るのは苦手だけど、靴全体を上品に輝かせたい!
という人にはクレムは全力でおすすめできる。
着色力が強い
クレムは色をのせるという面でもかなり優れている。
履きジワなどから薄ら色が抜けている靴などに使うとその効果が顕著に分かるだろう。
この色の抜け感というのも一つの経年変化の楽しみ方だと思うけど、しっかり補色された革靴も美しい。
鏡面磨きも可能
こちらはSAPHIR JAPANさんのインスタライブで拝見したが、なんとクレムで鏡面磨きもできる。
これには先述の通り、クレムにはワックス成分が多く含まれているので鏡面を作れるようだ。
流石にワックスより時間はかかるし使用量も多くなるが、ワックスよりも柔らかな鏡面になるので履きジワの上にも薄くのせることは可能なようだ。
価格
よくクレムは高いという意見も耳にする。
確かに乳化性クリームと比較すると割高に感じるが、油性クリームは別物であり、そもそも75mlの内容量はそう簡単には使いきらないのでそこまで高いとは感じない。
※私も1つも使い切っていない。
ちなみに先ほど登場したアーティストパレットは内容量35mlで同額だ(クレムは75ml)。
油性クリームの中では決して高い方ではない。そもそも油性クリームの数も少ないけど・・
ニュートラルは汎用性が高い
クレムにはニュートラル(無色)もラインナップされているが、実はこいつがかなりの優れもの。
普通のニュートラルのクリームとして色を変えたくない靴に使うことはもちろん可能だが、鏡面を補修したり落とすこともできる。
まずは鏡面の補修を紹介したい。
かかとの鏡面が曇ってしまったので、クレムのニュートラルを使って補修していく。
手順もものすごく簡単。
まずは少量のクレムを手の甲に広げる。
ここを山羊毛ブラシで擦り毛先にクレムを薄く付着させる。
そして、そのブラシで曇った鏡面をブラッシングする。
するとこんな感じに。
綺麗に鏡面が修復。
磨いたばっかだけど軽くぶつけたりして鏡面が傷つく経験は靴磨き経験者なら誰でもあるはず。
そんな時に完全に鏡面をリムーブするのではく、こうして補修することで過度にクリーナーを使う回数も減らせる。
また、鏡面を完全に落とす際には指や柔らかい布にこのクリームを取り、鏡面を撫でていくと少しづつ落ちていく。
これはクレムに油分が多く含まれていることを活用して、鏡面を溶かす。
もちろんクレムだけだと、鏡面は落とせても表面に油っぽさは残るので、完全に鏡面がなくなった後にクリーナーを使ってクレムごとリムーブする。
しかし、鏡面を落とすには専用のハイシャインクリーナーも発売されているので私はこちらを使っている。
実際に使ってみる
ではここから実際にクレムを使った靴磨きを紹介していく。
磨く靴はCARMINAのストレートチップ。
この記事を書いた時点で2.5年ほど履いてる靴。
画像の状態はクリーナー後にデリケートクリームで保湿を行った状態だ。
クレムを使った磨き方
通常のクリーム同様に
- クリームを塗布
- 5分おく
- 豚毛ブラシでブラッシング
- 柔らかい布で拭きあげる
この4ステップだ。
着色力も高く、テクスチャーにも若干のベタつきを感じるので塗布する際には塗りすぎないように。
そしてブラッシングや拭きあげる工程では余分なクリームを靴に残さないようにすることをいつも意識している。
途中5分おくという工程があるがこれはクレムの瓶に書いてあることに準じている。
おそらく浸透させる時間であることが想定される。
中には30分ほどおくという方もいるようだが、私のようなせっかちにはそこまで待てない。
クリームを塗布
まずはクリームを塗布していく。
私はクレムに限らずクリームは指で塗る。
コバの溝なども指で届く範囲で行う。
ちなみに一度にとる量はこのくらい。
この量を片足あたり4〜5回ほど満遍なく塗っている。
手で塗り終えたあとは下記の画像のように曇っている。
この状態で5分ほどおく。
豚毛でブラッシング
続いて豚毛ブラシで丁寧にブラッシングをしていく。
塗りすぎているとやや引っかかるように感じることもあるのでご注意を。
ここでクレムの特徴でもある強い光沢が現れ始める。
分かりやすいように片足のみブラッシングした状態を載せておく。
その後、両足をブラッシングするとこうなる。
拭きあげる
最後にブラッシングでも取りきれなかったクリームを柔らかい布で拭き取る。
ここでさらに光沢が増す。
何か変わった?という方は下記の拭き上げ前後を見比べて欲しい。
確かによく見ると・・・ってレベルかもしれないが私の肉眼では変化があるように映る。
よく見ると拭き上げ前はブラッシングの跡もある。
このようにクレムで磨くと上品で艶やかな仕上がりになる。
革の種類にもよるが、自然光で見るとかなり輝いているのでクレムで磨いたあとは是非履いて外で見てもらいたい。
ここは注意
ここまででクレムが優れたクリームであることを紹介したきたが、注意する点もいくつかある。
主に油性クリームであることや、このクリーム特有の着色の強さを気をつけなければならない時もある。
水分はない
クレムには水分が一切含まれていない。
革靴をケアする上で水分と油分が必要ということを考えるとクレム以外の手段で補給する必要がある。
私がよく使う組み合わせはデリケートクリームを塗った後にクレムで蓋をするというケア方法。
是非試して欲しい。
落ちにくい
油性クリームで補色効果も強いクレムだが、その成分ゆえに厚く塗ってしまうとクリーナーで落としきれないことがある。
同じクリームが靴に残り続けて酸化していくと、靴にとって良くないことは容易に想像つくだろう。
私が行ってる落とし方はワックス成分が多く入っているので、ハイシャイン用のクリーナーを靴全体に薄く塗布した後に水性クリーナーで取り除くようにしている。
シミに注意
着色が強いことを考えると薄い色の靴に使う際には注意が必要である。
良くクリームの色を見て買ったつもりが、実は思ったよりも濃くてシミができてしまうなんてこともありえる。
もしも色がない場合にはニュートラルと混ぜ合わせて薄い色を作ることも有効だろう。
愛用のシューケアアイテム
昨今は様々なシューケアアイテムが発売されていて靴磨きをこのタイミングで始めた人にはどれを選べば良いんだろうと思うかもしれない。
ぶっちゃけたことを言えば、どれでも良いけどケアをすることが大事だと思う。
私はクレムには絶大な安心と信頼を抱いていて今後も愛用していくだろう。
ワックスを使わなくても光を放つ光沢が欲しい!
傷や色抜けをマスクしたい!
なんて人にはクレムが向いてるんじゃないかと個人的には思う。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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