レザーソールをケアする
歩くたび、コツコツと小気味良い音を鳴らすレザーソール。
革靴愛好家からは、ラバーソールよりも通気性が良い、返りが良い、足に馴染みやすいという意見を散見する。
しかし、個人的にレザーソールを選ぶ理由は、シンプルにカッコ良いからという点に尽きる。
そして、ソールである以上、歩くたびに消耗し、いずれ交換が必要となる。
昨今では、靴磨きの人気も出ていることから、様々なシューケア用品が店頭に並ぶ。
その中には、もちろんレザーソールのケア用品もある。
用途としてはレザーソールの乾燥を防ぎ、交換までの期間を長引かせることとうたわれている。
けれども、私個人としてはレザーソールのケア用品を使用していて、「ソールケアしてたからソールが長持ちしてる」と明確な実感を得たことはない。
今回は、レザーソールケア用品が実際にどのような効果をもたらしているのかを3つの観点から検証・比較を行なった。
検証項目
レザーソールケアを行う目的として、レザーソール自体の交換期間をなるべく長くすることにある。
この長く使用するために必要な因子を、3つほど考えてみた。
- 乾燥していない
- 水の侵入を可能な限り防ぐ
- 削れにくい
これらの仮説に則り、検証項目は乾燥、耐水性、耐摩耗性を調べることにした。
検証・比較
今回の検証はレザーソールと見立てたヌメ革を使用して行う。
また、使用するケア用品は以下の2つ。
M.MOWBRAY ソールモイスチャライザー | TAPIR レザーソールオイル | |
---|---|---|
内容量 | 135ml | 100ml |
価格 | ¥ 1,650- | ¥ 2,860- |
形状 | クリーム | オイル |
検証① 乾燥・浸透
最初の検証は乾燥・浸透の度合いを測定していく。
- 仮想レザーソールに各ソールケア用品を同量を塗り込む
- 一定時間毎に塗布面の状況を確認
左にM.MOWBRAYのソールモイスチャライザー(クリーム)を、中央の仮想ソールにはTapir レザーソールオイルを塗り込む。
比較対象になるように右側には、何も塗らないものも用意した。
なお、クリームとオイルの塗布料はこの容器すり切りいっぱいとしている。
結果
塗布直後
- クリーム:薄ら色味が濃くなり、表面がしっとり
- オイル:明らかに色味が変わり、表面はサラサラ
30分後
- クリーム:色味は何も付けていないものとほぼ同じ、表面は変わらずしっとりしている
- オイル:やや薄くなったものの明らかにクリームよりも濃い色味
また、このタイミングで裏面を確認したところ、オイルは革の裏面でも確認できるほど浸透していた。
1時間後
- クリーム:色味は未添加のものと変わらず、表面の保湿を維持
- オイル:色味は明らかに濃いまま、表面はサラサラしている
24時間後
オイルの色味は薄くなったものの、どの仮想ソールも表面の状態に大きな変化はなし。
以上の結果より、クリームでは表面の保湿を保つことを確認。
一方のオイルは、表面はサラサラしている状態であるものの、より深く浸透する可能性があることを確認できた。
結論
- クリーム:革表面の保湿性が高く、表面はもっちりしている
- オイル:浸透性が高く、表面の仕上がりはサラサラした状態
検証② 耐水性
2つ目の検証は耐水性。
各ソールケア用品を塗り込んだものと、何も塗っていないものに同量の水分(0.5ml)を塗布して、浸透までの時間を調べる。
- ケア用品を塗り込んだ仮想レザーソールに一定量の水(0.5ml)を付加
- 浸透までの時間を計測
結果
開始時
それぞれに一定量の水分を垂らしたところ、クリームタイプのものは水滴が丸みを帯びて浸透を防いでいる。
オイルを塗ったものは、水滴の淵から浸透が始まっているが、何も塗布していないものよりは水を弾いているように見える。
1分後
わずか1分で、何も付けていないものは水が浸透しきってしまった。
中央のオイルも水の浸透が進んでいる。
2分後
オイルを塗った革も水を添加してから、2分後には浸透。
クリームを塗布したものは、まだ水を弾いている。
5分後
ついにクリームを塗布した革も水滴の周囲から浸透が始まる。
この時のクリームとオイルの水滴の状況を見てみると、水滴を弾くという点においては明らかにその差が明らかにある。
20分後
ここでクリームを塗布した革も水を通しきる。
1時間後
もう決着はついているが、1時間の状態はこちら。
どの革も水の浸透が進み、無添加のものは水滴の跡すら消えかかっている。
結論
各ソールケア用品塗布後の耐水性の結果を検討した結果、クリームのソールケアが最も水を弾くことが分かった。
オイルも無添加よりは水を弾いたものの、そこにはほとんど差がなかった。
しかし、検証①で記載したようにクリームはあくまで表面に対する膜を張っていることが想定される。
実際の歩行時にはソールは地面と直接触れて、削れていく。
この点を考慮すると、使用時における耐水性はどちらが優れているかは判断しにくい。
検証③ 耐摩耗性
最後の検証は、どれだけ削れにくいかを検討した「耐摩耗性」
実際のところ、レザーソールを長く履くためには、この項目がもっとも重要視すべきものだと個人的には考えている。
削れるスピードを遅くできれば、ソールは長持ちするからだ。
- レザーソールに見立てた革を靴底に貼り付ける
- 3種類とも同じ距離を歩行
- 削れた度合いを観察
このように靴底に装着して、同じ距離を歩行していく。
正直なところ、この検証を行なってる最中は、私は何をやっているんだろう?
真夏の炎天下での3往復は非常に堪えたが、なんとか完遂。
その結果、このようになった。
結果
この画像から判断できるのは、ソールの汚れの少なさは クリーム>無添加>オイル であることは分かる。
では、この検証の主目的である削れた度合いはどうなのか?
クリーナーで取れる汚れを落として、しばらく置いた後の表面を観察した。
各仮想ソールのアップはこのようになった。
クリームを塗布したものから順に載せていく。
実際に表面を見て触ってみると、無添加のものがざらつきが最も広い範囲であった。
クリームを塗布したものはざらつきは負荷のかかったところだけ、あるように感じた。
一方、オイルにはざらつきの箇所が最も少なかった。
また、クリーナーを使用しても完全に取れたという感覚がない(現にTAPIR特有の匂いもわずかにする)
結論
この結果から、無添加のものと比べるとケアを施したものの方が耐摩耗性は向上する可能性がありそうだ。
しかし、そこに明確な差とよべるほどではなかったので、もう少し長い時間をかけて検討する必要性もありそうだ。
また、クリームとオイルの比較だが、表面の水を弾いたり汚れをつけさせないという点では、クリームが優れている。
一方で、オイルは浸透性の高さから、レザーソールの奥深くまで湿潤する可能性があり、表面が削れてもすぐに毛羽立つことは少ないのかもしれない。
検証の穴
ここまで3つの検証を行なってきたが、否定できないバイアスも複数ある。
- 各ソールケア用品は使用開始時期が異なる
- 各ソールケア用品の至適容量が異なる可能性
- 耐摩耗性の検証における歩行距離は同じでも、歩数は異なる
- 実際の使用時間はもっと長い
etc・・・
最強のソールケア?
今回の検証を経て、クリームはソール表面に汚れや水に強い膜を貼り、オイルはその浸透性の高さからレザーソールの奥深くまで乾燥を防ぐことが分かった。
ということは、オイルでケアをした後にクリームで蓋をすることで両者のメリットが活かせるような気もする。
この辺りは要検討項目だ。
まとめ
今回の検証を通じて、レザーソールケアは手入れをしないものと比べると、ソールを守るという点で有用性がありそうだ。
また、今回は短時間での検証となったが、実際に歩行負荷を加えてもわずかながら、手触りの感覚で違いが見られた。
そして、ソールケア用品のクリームとオイルの比較は、両者には機能性で違いが見られた。
クリーム
- レザーソール表面を保湿する
- 耐水性がオイルよりもある
- 汚れの付着がしにくい
オイル
- クリームより浸透性がある
- 歩行後の表面の毛羽立ちの少ない(?)
レザーソールケアを行うことで、ソールの減るスピードを緩やかにする可能性がある。
ケア用品もクリームベースのもの、オイルベースの種類があり、それぞれに特徴が見られる。
まだまだ検討余地があるが、ケアをすることがマイナスになることはないので、定期的に手入れをするのが良さそうだ。
コメント
コメント一覧 (2件)
こんばんは。今回もとても為になる検証が拝見でき、得るものの多い素晴らしい内容でした。
先日ソールケアをしていた時に、親父から『それ、何の為にやってるの?』とツッコミが入りまして、モヤッとした答えしか出来なかったのですが、次回は自身満々に答えてあげられそうです!
msmarket17さん
ご覧いただきありがとうございます!
私もどこまで効果があるかも分からずに漫然と行ってました。笑
ケアをする裏付けが少しでも分かると説明しやすいですね。