用途別3つのジャンルで紹介
革靴をもう少しだけ深く知りたい。
革靴を履くためのギアだけにとどまらず、趣味としてもっと知りたいと思うことはないだろうか?
素材、製法、履きこなし、手入れ、歴史など革靴にはいくらでも追求できることがある。
今回は革靴のことをほとんど知らなかった私が、趣味であると堂々と言えるくらいまでに知識を得られた8つの書籍を3つのジャンルに分けて紹介したい。
総合解説書
一流の人はなぜそこまで、靴にこだわるのか? 渡辺鮮彦【無料】
この本の冒頭は1枚の写真から始まる。
その写真は筆者が25年間履い続けたチーニーのカントリーシューズだ。
この本ではビジネスマンにとっての革靴は必要な道具。
しかし、消耗品としての革靴ではなく「相棒」のような存在であると記されている。
そんな相棒の見つけ方や手入れ方法、コーディネートの実例など革靴のことが幅広く書かれた書籍だ。
いまあなたが、これから長く大切に履いていきたい革靴が欲しい。
でもどんな靴を選べばよいか迷っているなら、手に取って欲しい1冊だ。
筆者は「一流の人・ビジネスパーソン」に共通する、普遍的な靴選びのルールがあると述べている。
飽きがきにくく、使用されるシーンが多いお気に入りの一足を見つけるきっかけになるだろう。
こうした書籍を参考に、革靴を選んでみてはいかがだろうか?
無料で読める
そして、この本はKindle Unlimitedで無料で読むことができる。
Kindle Unlimitedは初月無料で、その後は月額980円で読み放題になるサービス。
解約金もかからないので、試してみるのはいかがだろうか?
皮革ハンドブック 日本皮革技術協会編
この本は革靴を中心に書かれたものではない。
しかし、革靴の素材である「革」をメインにこれでもかと深く語られた書籍。といよりも辞書だ。
その内容には皮から革に至る工程、革製品の製法・特性、革の消費性能などが詳細に記されている。
化学的な専門用語も散りばめられているので、読み進めるのには少々苦労する。
しかし、普段何気なく使用している革製品をよりいっそう深く知ることができる。
一部の内容は過去記事でも紹介しているので、興味のある方はご覧いただきたい。
手に入れにくい
残念ながら、この本は現在、絶版となっている。
私も中古で手に入れることができたが、定価よりも高いお金を支払った。
大きな図書館には置いてあることも多いので、試しに読んでみたい方は探してみるのも良いだろう。
紳士靴を嗜む はじめの一歩から極めるまで 飯野高広
この書籍は今回紹介しているなかで、最も情報の網羅性があるものだ。
革靴に関する知見を総合的に深めたい思うなら、この本を強く推奨する。
ファッション誌で取り上げられるようなブランドの名称や歴史にはほとんど触れず、紳士靴の根本的な知識にページを割いている。
こうした核となる情報が網羅されているので、私自身も読み返すことが最も多い本だ。
マニアの中では当たり前のような語られている革靴の製法、パーツ、特徴などもこの本を読めばほぼ全て理解できるだろう。
また、革の解説も簡潔で分かりやすく記載されている。
この本を初めて読了した時には、単純に革靴って奥が深くて面白いと思えた。
革靴が好きな方はもちろん、もっと革靴を深く知りたいという方におすすめの一冊。
お手入れ
革靴の手入れを語る本は数多くあるが、基本的な磨きからマニアックな方法まで知るには個人的にはこの2冊で充分だと思う。
- 靴磨きの本 長谷川裕也
- 続・靴磨きの本 長谷川裕也
ここでは2冊まとめて紹介していく。
2冊ともBriftHの長谷川さんの書籍となるが、1冊目は基本的な磨き方をマスターするのによし。
2冊目はかなり細かいところまで書いてあり、靴磨きを極めたいという人にはもってこいの内容となっている。
- ビギナー向け 「 靴磨きの本 」
- マニア向け 「 続・靴磨きの本 」
こんな経験はないだろうか?
初めて鏡面磨きができたときに、こんなに光るのかという経験。
でもこれを続けていくと、SNSに溢れる綺麗に磨かれた靴とは何かが違う。
自分のは確かに強く光っているけど、なんだかちぐはぐしている。
それが不思議でプロや上手な方の磨きの画像や動画を見てみると、どうやらただ光らせてないことを知る。
つま先は強く光り、靴ひも側に近づくにつれて光り方がフェードアウトしていく。
さらに鏡面磨きのセオリーでは、芯材のあるつま先とかかとのみと聞いていたのに、それ以外の革靴の周囲を覆うように美しく光っている。
こうしたことを見よう見まねでやってみると壁に当たる。
目標とする状態は分かっていても光のグラデーションに仕上げることができず、周囲を覆うワックスはセロハンテープを貼ったような いかにも「ださい」磨きになってしまう。
しかし、「続・靴磨きの本」にはこうしたマニアックな細かいところまで記載されている。
指でのせるベースのワックスはどこにどの程度?
ネル布を巻いて磨く時の動かし方は?
私がぶち当たった壁は全て書いてあった。
靴磨きが好きで基本的なお手入れや鏡面磨きができる人には、是非とも手に取っていただきたい。
さらに磨きを追求する助太刀になるはずだ。
靴磨きしながら見れる製本
この2冊は紙の本のみ出版されている。
電子書籍派の私にとっては少し残念であったが、開いたまま置いておける製本を採用しているのは非常にありがたい。
靴磨きの方法が詳細に描かれているので、この本を見ながら靴磨きをする方も多いはず。
好きなページを見開きで置けるので、ストレスフリーだ。
YouTubeで特別補完教材も!しかも無料!
「続・靴磨きの本」の発売後に文章と写真で分かりにくいところを動画で解説してくれている。
これはYouTube内でフリーで見れる動画なので、書籍を購入された方はこの動画を参考にして、さらに磨き方を学ぶことができる。
歴史
西洋靴事始め 日本人と靴の出会い 稲川 實
この書籍は東京都立皮革技術センター台東支所発行の機関誌『かわとはきもの』に連載中のコラム「靴の歴史散歩」を再構成されたものだ。
25年分の連載という非常に情報量多く語られた本書は、日本人と革靴の歴史を解説している。
この本のざっくりした内容は、以下の通りだ。
日本には西洋の革靴文化はいつきたのか?
洋式化はどのように進んだのか?
軍靴によってもたらされた靴産業とは? etc…
こうした革靴という洋式文化がどのように浸透していったかを多面的に描かれているのが本書の特徴。
中には歴史的に貴重な資料なのでは?と思うような写真も数多く記載されており、当時の履き物文化の資料を直にみることができる。
個人的には、戦争によって様々な革を用いるようになったことが驚きの事実であった。
てっきり、趣味嗜好の延長線上に発展した皮革文化だと思っていたが、戦争中の物資不足から色んな生物の革を作った背景もあるようだ。
- 馬・豚革の使用
- 水産皮革の開発(サメ)
- 生ゴムを底材に使用(戦線が南方に延びたため)
当時はもっぱら「革靴=牛革」だったようだが、こうした状況からいろいろな生物の革が使用されたようだ。
今でこそ、さまざまな革のレパートリーがあることやゴム底の革靴なんて当たり前に感じられるが、こうした背景もあったと思うと驚きを隠せない。
ちなみに当時の鮫革でゴム底の靴は浸水性が高く、よく滑るので実用性は低かったのだとか。
戦争中の試行錯誤が少なからず現代の革靴に影響を与えている。
そんな「革靴」という文化の成り立ちを知るにはうってつけの本だろう。
靴づくりの文化史 日本の靴と職人 稲川 實/山本 芳美
「靴作り」を主に描かれた歴史の解説
専門分野は「イレズミ」である著者の山本さんが、前述の「西洋靴事始め 日本人と靴の出会い」の著者である稲川 實氏に伺った話をベースに書いた靴作りの歴史書籍。
「西洋靴事始め 日本人と靴の出会い」と「靴づくりの文化史 日本の靴と職人」では重複する内容もあるが、後者ではタイトル通りに「靴作り」の歴史に焦点を当てている。
主な内容は下記の通りだ。
- 時代の流れの中で履物・職人の働き方
- 靴の製造・分業に歴史
- 靴作りの技術
- 地域ごとの靴作りの特徴
- 靴作りを目指す若者が増えている etc
時代の流れ中で草履・下駄から革靴へ。
革靴の中でも手製靴から機械式の靴への移り変わり、さらにはスニーカーの台頭。
こうした目まぐるしいほどほどの履き物文化の中で、革靴を作る職人達はどのように働いていたのかが詳細に書かれている。
本書を読み進めていくと、革靴を一足作るのにも多くの人の手と技術を要していることを改めて実感する。
何気なく履いてるお気に入りの革靴も生産者の苦労があって、美しく仕上げられていることを痛感。
本文中にも山本さんの言葉でも、靴作りの難しさが綴られている。
「たくさんのパーツを職人技で組み立てていく靴は総合芸術ともいえ、どの過程もよくなければはきやすい靴は生まれない。つまり、一見しただけではわからない、人間の知恵と技術が集積されているのが「靴」なのだ。」
—『靴づくりの文化史 日本の靴と職人』稲川實, 山本芳美著
BESPOKE STYLE A Glimpse into the World of British Craftsmanship 長谷川 喜美(著)/エドワード・レイクマン(写真)
最後に紹介するのは、英国ビスポークスタイルの歴史。
革靴のみならず、スーツやシャツなどメンズファッションの全般に触れている。
本書ではこれまで紹介したような「革靴」というプロダクト自体の歴史ではなく、それを作るメーカーの話が綴られている。
革靴に関しては3つのメーカー歴史から現代に至るまでの流れや、最高峰のクラフトマンシップを感じられる写真・文章を堪能することができる。
BESPOKE STYLE A Glimpse into the World of British Craftsmanship 長谷川 喜美/エドワード・レイクマン
気になる3つのメーカーだが、ジョンロブ、ジョージクレバリー、ガジアーノ&ガーリングと英国を代表するビスポークメーカーが取り上げられている。
これらのメーカーは既製靴も展開していることからも、興味のある方は多いのではないだろうか?
このような特定のメーカーを深く掘り下げることは、流行性のある雑誌ではあってもこうした書籍では珍しい。
ビスポークという文化を作り上げたといっても過言ではない英国を、いや世界を代表するメーカーの歴史は時の流れとともに陳腐化し易い雑誌の特集に取り上げるにはあまりにも勿体ない。
いつまでも語り継がれるであろう「革靴の顔」とも言えるメーカーの歴史に触れてみてはいかがだろうか?
活字はどうしても無理・・・
本記事ではここまで革靴に関する書籍を取り上げてきた。
いずれも「革靴」を多面的かつ本質を知ることができるものだろ考えている。
しかし、私のリアルな環境でもこうした活字を読むのは・・・という方が複数いる。
そうした方には雑誌のムックや漫画でも参考になるものがあるので紹介したい。
LAST
革靴好きには言わずと知れた靴専門情報誌「LAST」
革靴に関連する百貨店のイベントや新規オープンのショップの内容などが紹介されている。
また、こうした時事ネタだけでなく、いつまでも使えるような革靴の情報もびっしりと載っている。
王様の仕立て屋
スーツの生地であるナポリを舞台に、日本人の天才仕立て屋が主人公の物語。
この漫画は一貫した長編ストーリーの中に、一話完結の短編形式として描かれている。
革靴をメインに登場するものではないが、紳士服全般を扱っている。
ちなみにサルト・フィニート編の25巻では、革靴をメインにした物語なので必見である。
まとめ
今回は、革靴に関する本をまとめて紹介した。
革靴とはどんなものなのか?どう手入れをするのか?どんな歴史があるのか?
そういった疑問は、今回紹介した8冊を読めば、おおかた解決されるだろう。
いずれも学びの多い本であったため、未読のものがあれば是非とも参考にして欲しい。
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