光沢を出さずに手入れをする
革靴は靴磨きというフィルターを通すことでその外観を変化させる。
中でも靴を光らせて艶感を増すことは、靴磨きの醍醐味だとも言えるだろう。
しかし、光らせるだけが靴磨きではない。
艶を抑えたマットな仕上げというのも一味変わった雰囲気となる。
このマットな仕上げというのは何も特別な磨き方をする必要はない。
使用するシューケア用品を変えるだけで良いのだ。
マットに磨かれた靴はカジュアルな服装でも使いやすいので、オンオフ兼用の革靴にもこんな施しをするのも良いだろう。
光沢を抑える方法
結論から言えば、艶を抑える方法はろうの含有量が少ないクリームを使うことだ。
靴クリームの主な成分は油脂、ろう、有機溶剤。
靴にクリームを塗る時に、有機溶剤は揮発して油脂は革内に浸透する。
ろうは革の表面に残り、これが光沢を生む。
ちなみに含有成分の有機溶剤については過去の記事で紹介もしているので、是非ともご覧いただきたい。
ろうの少ないクリームとは?
クリームは大きく3種類に分類されます。
光沢の強くでるものから順に油性クリーム、乳化性クリーム、デリケートクリームである。
デリケートクリーム | 乳化性クリーム | 油性クリーム | |
水分 | 多 | 中 | 少または無し |
ろう | 少 | 中 | 多 |
この中で最もろう含有量が多いのが油性クリーム。
代表的なもので、SAPHIR NOIR(サフィールノワール)のCreme1925があるが、これを塗り込んでブラッシングするだけでも、ギラっとした艶が出る。
一方で、ろうの含有量が少ないデリケートクリームは、艶のでない仕上がりになる。
今回使用したのはM.Mowbrey のデリケートクリーム。
艶は控えめですが、上品な仕上がりです。
油性クリームで磨いた時よりも素の仕上がり感があります。
比較するとこのような感じに。
最もマットに仕上げるならレーダーオイル
デリケートクリームよりもさらにツヤを落とした仕上がりにするにはTapir のレーダーオイルを使用すると良い。
おそらく最も光沢のないマットな仕上がりを目指すならこれだろう。
クリームと違ってオイル状のシューケア用品なので、浸透もしやすい。
補色はできない
デリケートクリームやレーダーオイルは基本的に無色だ。
したがって補色効果はない。
また、デリケートクリームに限っては水分がメインになるので、このクリームだけでケアし続けると油分不足になる可能性もある。
そういったことを踏まえると、色抜けのある靴はたまに補色効果のある乳化性クリームや油性クリームと交えながらケアをすることを推奨します。
しかし、M.Mowbrey デリケートクリームにはブラックもあるのだ。
これは乳化性クリームほどではないが補色効果も狙えるデリケートクリームになる。
カラーバリエーションはブラックのみなのが残念。
マットな仕上げのここがよかった
今回はマットに仕上げるシューケア用品を紹介した。
実際に自分の靴をマットに仕上げてみると、普段から光沢を出す磨きをしている私にとっては新鮮。
マット仕上げをしてみて、感じたメリットは3つあります。
・手入れに時間がかからない
・次回のケアが楽
ワックスのような強調した艶感がないため、お葬式からビジネスシーンまで革靴を履く場面ではいつ履いてもおかしくないと思う。
また、私個人の考えにもなりますが、カジュアルな服装に鏡面磨きがされている靴との相性はそこまで良いと思っていない。
なので、選べる服装の幅も広がる。
そしてワックスを使った鏡面磨きや汚れ落としの時に時間がかからない。
ワックスや油性クリームを塗っている場合には、汚れ落としのステップで時間を要する。
一方で、デリケートクリームの場合は水溶性のクリーナーで軽く落とせる。
普段から私のように油性クリームやワックスで磨いているあなたにも、是非一度お試しいただきたい。
手入れの道具を変えるだけでここまで表情を変えられることに改めて靴磨きの魅力を感じられると思う。
ツヤがない革靴というのも合わせやすくて良いもんですね。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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