とりあえず使ってた
シューツリーは靴を長く履くためには必須だと言われる。
なんとなく分かっているが、果たしてどれほどの効果があるのか?
また、シューツリー自体の素材にも種類があるが、いったいどんな違いがあるのか?
そんな疑問も解決するためにシューツリーの効果検証を行った。
期待される効果
ちまたでよく聞く、シューツリーを入れる目的は以下の3つ。
- 水分を吸湿
- 形状維持
- 消臭
木製のシューツリーであれば、確かに効果はありそうだ。
上記のシューツリーの効果を、実際にどの程度効果があるのかを木製シューツリーで検証してみた。
【検証】本当に効果があるのか?
結論から言うと、シューツリーは間違えなく効果がある。
靴に合っているものや、用途に合った素材を選んでいればさらに効果が見込める。
では、ここからシューツリーの効果検証の結果を記していく。
吸湿性
木製のシューツリーならば、汗などの水分を吸収する効果があると聞く。
しかし、木製シューツリーと言っても表面がニスやワックスで加工されて滑りをよくしたもの、一方で無垢な状態なものもある。
これらの木製シューツリーは本当に吸湿性があるのか?
また、表面加工(ニス・ワックス)されたものとそうでないものには差があるのかを2つの方法で検証していく。
- 木製シューツリーに吸湿性はある?
- 表面加工は吸湿性に影響する?
検証① 高湿度下での重さの変化
湿度の高い環境下にシューツリーを一定時間置くと、重さはどう変化するか?
表面加工、無垢のものをそれぞれ室内で測定
直接水分が触れないように配置
測定後に再び、バスルームへ戻す
測定後に室内へ移動
上記の方法でシューツリーの重さを測定したところ、このような結果になった。
無垢 | 表面加工 | |
①スタート時(室内) | 353.0g | 375.0g |
②バスルーム 1時間放置後 | 354.0g | 375.0g |
③さらに 8時間バスルーム放置後 | 357.5g | 375.5g |
④室内に戻して 13時間放置 | 356.5g | 375.0g |
⑤さらに 12時間室内で放置 | 357.0g | 375.5g |
まず、注目いただきたいのはスタート時の重さとバスルームに9時間後(①→③)の変化。
無垢:+ 4.5 g
(353.0 g → 357.5 g)
表面加工:+0.5 g
(375.0 g → 375.5 g)
シューツリーの増えた重さを水分の吸収量と考えると、両方のシューツリーとも吸湿性があることが確認できる。
しかし、表面加工されたシューツリーの重さはわずかな変化量。
加えて、今回の計測機が 0.5 g刻みであることを考えると吸湿性がほとんどない可能性も否定できない。
次に注目いただきたいのは、室内に戻してからの無垢のシューツリーの重さ(③→⑤)
無垢:– 0.5 g
(357.5 g → 357.0 g)
スタート時の重さ:353.5 g
無垢素材のシューツリーは吸湿性がありそうだが、室内で24時間以上放置しても元の重さには戻っていない。
部屋の湿度の関係もあると思うが、水分放出には時間がかかりそうだ。
検証② 直接水をつけて重さを確認
高湿度環境下の検証結果を裏付けるために、シューツリーのもうワンペアを使って先ほどとは異なる方法で吸湿性を確認した。
水を含ませたコットンをシューツリーに乗せ、一定時間後の重さはどう変化するか?
室内で元の重さを確認
コットンあり、なしでそれぞれ測定
それでは結果に移る。
ここでも、吸湿性という観点から見ると、無垢素材のシューツリーに軍配が上がった。
無垢 | 表面加工 | |
①スタート(室内) | 352.0g | 407.0g |
②水を含ませたコットン(+5g)をのせる | 357.0g | 412.0g |
③室内放置(8時間) コットンあり | 355.5g | 410.0g |
④コットン取り除き後 | 354.0g | 407.5g |
まずは開始時と終了時におけるシューツリーの重さの変化を確認(①→④)
無垢:+ 2.0 g
(352.0 g → 354.0 g)
表面加工:+ 0.5 g
(407.0 g → 407.5 g)
同量の水を付加したにも関わらず、最終的にはシューツリー自体の重さ(=吸質量)には差が出た。
また、②→③の変化を確認することで、自然蒸発量も確認。
無垢:- 1.5 g
357.0 g → 355.5 g
表面加工:- 2.0 g
412.0 g → 410.0 g
これだけ小さなコットンでも、自然蒸発はこれだけあることが確認できた。
表面加工のシューツリーを使用しているならば、革靴を履いた後には自然乾燥した後にシューツリーを入れることが望ましいだろう。
- 木製シューツリーの吸湿性を確認
- 無垢のものは吸湿性効果が十分見込める
- 表面加工はわずかな効果
形状維持
次の検証は形状維持について。
シューツリーを入れることで、革靴の形状を保つことができると言われている。
簡単な検証方法ではあるが、どれだけ形を補正できたかを見ていく。
シューツリーの形状維持効果はあるのか?
片足のみシューツリーを入れて比較
丸一日、着用後の革靴に片方はシューツリー、もう一方は何も入れずに形状変化を確認
まずは丸一日履いた革靴がこちら。
この革靴に左足だけシューツリーを入れる。
これで半日放置する。
そして、シューツリーを抜いて比較するとこうなる
変化が分かりにくいので、シューツリーを入れる前後の履きシワのアップで比較。
この画像からも、シューツリーの入っていなかった右足(左側)はシワがが入ったまま。
一方でシューツリーを半日ほど入れた左足(右側)はシワが伸びている。
靴にあったシューツリーを入れることで形状維持効果が見込める
シューツリーを入れずに靴を管理していると、シワが深く入ったままの形状が維持されてしまう。
この状態になると、歩行時などに折り畳まれた履きシワに負荷がかかり、クラックの要因になりかねない。
履きシワをしっかり伸ばすことのできるシューツリーが望ましいだろう。
消臭
ここはテキストではもっとも説明がしにくい。
検証というよりは、要点としてまとめておく。
- 無垢のシューツリーで効果が期待
- 表面加工は匂いなし
- シダーのものは香りが強め
天然素材の木で作られたシューツリーには、消臭作用があることはよく聞く。
木自体が持つ香りで嫌な臭いを消すならば、私の経験からはシダーのものは最も消臭効果が高い。
2,000~3,000円台の手頃なシューツリーでもシダーのものは多くあるが、届いた直後の匂いの強さには毎度驚くほど。
無垢素材のデメリット
ここまでの結果から、無垢素材のシューツリーには機能面で多大なメリットがあることがわかった。
しかし、以下のようなデメリットもある。
- 滑りにくい
- 汚れやすい
- 香りは消失していく
天然素材であるために、表面には細かな凹凸もあって滑りにくく汚れやすい。
滑りにくさは、シューツリーを入れるときに少し力が必要になることがある。
また、靴磨きをする時に手についたクリームなどが付着すると簡単には落とせない。
加えて、香りの強さも時間と共に消失する。
汚れや香りの復活には紙やすりを使うことで復活させることができるが、手間であることは間違えない。
おすすめのシューツリー
では、どのシューツリーにする?
と悩んだ時にはあなたがシューツリーに何を求めるかによって選ぶものが変わる。
- 着脱時にストレスなく使用できる
- 汚れにくい
こうした方には、表面加工のシューツリーが良いだろう。
表面加工のものは高価なものが多いが、シューツリーを代表するメーカーのコリドヌリ アングレーズ、サルトレカミエなどがおすすめ。
- 吸湿性が欲しい
- 消臭効果がある
こうした機能性を重視する人は、無垢素材のシューツリーを選ぶことを推奨する。
無垢素材のシューツリーは、かなり手頃なものも発売されている。
ただし、安いものは表面にざらつきがあるものもあった。
まとめ
以上のことから、シューツリーの使用は多大なメリットがあることが分かった。
また、木製シューツリーの特性は、表面加工の有無で違いがあった。
表面加工 | 無垢 | |
吸湿性 | △ | ○ |
形状維持 | ○ | ○ |
消臭 | × | ○ |
使いやすさ | ○ | △ |
汚れやすさ | ○ | △ |
あくまでも一般的な指標にはなるが、シューツリーを選ぶ際の参考になれば幸いである。
革靴の寿命を少しでも長く保つために、是非その革靴にあったシューツリーを見つけていただきたい。
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